NSXタイミングベルト交換&メンテナンス作業の紹介です。

★タイミングベルト交換&メンテナンス★
組み付け篇


さあ、それではいよいよ組み付けに取り掛かります。
事前に補機類の準備はしてありますんで、
ここからはサクサクと...いけばイイんですけどね・・・

まずは先ほどの答えから!




 

この部品を交換するためなんです。
ロストモーションスプリングという部品です。

ロッカーアームが3本あるのがわかりますか?
両脇の2本のロッカーアームがバルブを押さえる役目をしています。
NSXのエンジンはVTECですのでカムにはLo側とHi側の2種類の山があります。
この2本は上からLo側のカム山に押されています。

真ん中のロッカーアームはHI側のカム山に押されています。
VTECがHi側に切り替わると油圧の作用によって
3本のロッカーアームが連結されるんです。
と、言うことはVTECがLoの時、
真ん中のロッカーアームはフリーなんですよね。

でもそのままだとロッカーアームが遊んでしまい、
いざ切替えようって時に位置が合わなくって連結できません。
そこでこのロストモーションスプリングで持ち上げて
位置を出すようにしているんです。
つまり常にHi側のカム山によって押しつけられていますので、
距離が出てくるとスプリングがヘタっちゃうんです。







 

一旦ロッカーアームを外さないと交換できません。







 

 スプリングが入っていた穴には汚れが溜まっていました。
オイル管理がしっかり出来ていてもこの辺はしょうがないですかね。
こういう機会でもないと掃除は出来ませんね。







 

じつはロストモーションスプリングは構造が変わっているんです。
右側のスプリングむき出しの物が新しいタイプです。
元々は後期型のエンジンからこの形状に変更になったんですが、
寸法が微妙に違っていたので、そのままでは前期型に流用できなかったんです。

ところが現在では前期用の補修部品を注文すると新しいタイプに変更されています。
元々の前期用はケースの中にスプリングを収めて
けっこう凝った造りの物になっています。
後期用はスプリングむき出しのシンプルな構造。
でもケースがある分前期用はスプリングのサイズが小さいですよね。
その辺がヘタリの要因だったのかも?

そこでサイズを大きくした設計になったんでしょうかね。
凝りすぎも良くないってことなのかもしれません。
なんかさっきのファンの話と共通するような・・・
まあ、バブル時代のクルマですんで、
設計時点ではしっかりお金を掛けて凝った造りにしたんでしょう。







 

新しいスプリングが収まりました。
これでもう、当分の間は心配いりませんよね。







 

こんなとこにもゴムのOリングが付いています。
ロッカーアーム周辺はVTEC用のオイル通路がいっぱいありますんで。
もちろんゴム類は全て新品交換ですよ!







 

新品のオイルシールを組んでカムを載せます。







 

カムホルダーも洗浄してあります。
ここも内部にオイル通路がありますんで、きっちりやっとかないとね。







 

ここにも小さなOリングが。
部品を発注する時に注意が必要です。
見落としていたらそこで作業が中断しちゃいますからね〜。







 

カムホルダーが固定されました。
これでヘッド廻りの作業は終了です。







 

続いてはウォーターポンプの交換です。
ココも設計変更になっています。
先ほどのクランクタイミングプーリーのサビの件がここで出てきます。

矢印の部分の穴はポンプのシール部分から滲んだ冷却水の排出口なんです。
ここにタイベルカバーがはまり込んで外に流す仕組みになってます。
ここにもOリングが入っているんですが
経年劣化などでカバー内部に冷却水が流れてしまうんです。
で、プーリーがサビちゃってるということです。







 

ボルト穴に残っているロック剤をタップでキレイにしときます。







 

ウォーターポンプを取付けます。







 

これが新しい排出口です。
確実にカバーの外に冷却水が流れ出るようになっています。
そのためポンプとカバーをセットで交換するようになっています。







 

サーモスタットも新品にしました。







 

エンジン廻りのホース類も新品にします。
当然ながらOリングやパッキンもね。
このあたりは車載状態でも出来ない事はないんですが、
かなり面倒なので工賃もお高くなりますよ。







 

新品のクランク角センサーです。
バラす時のオカルト映画状態とは大違い!(笑







 

タイベルカバーのプレートも洗浄してあります。
もちろんパッキンは新品を使います。







 

カムプーリーも付いてだいぶ形になってきましたね〜。
各部洗浄してキレイなので作業をしてても気持ちイイ!!







 

さあ、いよいよタイミングベルトのお出ましです。
タイミングベルトにはオイルや汚れを付けるのはご法度なんです
。 これだけキレイな状態だと汚れる心配もありませんね。
車載状態の作業だとこうはいきません。







 

続いてはベルトの張り調整。
エンジンの回転方向とは逆方向に順番に張っていきます。
って、口で言うのは簡単ですが・・・

まずはクランクプーリーを回らないように固定して、
カムプーリを前から順番に張っていきます。
1個目を張ったらそれを保持したまま2個目を張る。
といった具合で工具を2本使って順番に張ります。
これも車載状態だと・・・







 

4個目のプーリーが張れたら、クランクとの間の弛みを
テンションプーリーのスプリングの力で張ります。
この時テンションプーリーを指で押したりするのは張りすぎになるのでNG。
そのためスプリングは新品にしておきます。

そしてクランクを正回転方向に少し回して、各カムに反力が掛った状態にします。
そこでテンションプーリーのボルトを一旦緩めて
再度スプリングの力でベルトを張ります。
その状態でボルトを締めれば調整完了です。
ベルトの張りはユルすぎても張りすぎてもマズイんですよね。







 

最後に各プーリーの合マークを再度確認します。
これがズレてると何にもなりませんから・・・







 

クランクプーリーは新品にします。
このプーリーは内部にゴムのダンパーが入っている構造で、
けっこう破損してのトラブルが多いようなんですよね。







 

クランクプーリーボルトを締め付けます。
これがけっこう大変なんですよ!
なにしろ規定トルクが25kg-mなんちゅうバカデカイ数値なんです。
普通のトルクレンチでは締められません。
専用工具でクランクプーリーの回り止めをしておきながら
巨大トルクレンチを使って締めました。
それも2人がかりでやっとこさ・・・

まあ、緩める時はもっと苦労したんですけどね。







 

続いてはタペット調整。
このぐらいの距離になるとけっこう派手に音がでていますんでね。
この作業も車載状態では無理ですね。
って、私は1度やった事がありますが、2度とやりたくありません!







 

タペットカバーは塗装しておきました。
結晶塗装になっていますんでツヤ有りの塗料を使っちゃうと
せっかくの雰囲気が台無しになっちゃいますんで・・・







 

だいぶ組み上がってきましたよ〜。
補機類の準備は万全なんでここらへんからはサクサクいきますよ〜!







 

プラグとイグニッションコイルを装着。
マニホールドやハーネス類も取付けます。







 

イグニッションコイルカバーのパッキンも新品にします。
プラグホールやコイル部分への水の浸入を防ぐ重要なパッキンです。







 

塗装のおかげでタペットカバーもキレイです。
まるで新品エンジンみたい・・・っていうのは言い過ぎ?







 

補機類も装着してエンジンが組み上がりました。
ここまで来ればもう一息。







 

とりあえずエンジンが載っかりました。
ハーネスやら配管やらを繋いでいきます。

そして最後にもう一つの作業!
 






 

オイルパンのパッキン交換です。
ここもオイル滲みのトラブルが多いポイントです。
もちろんオイルパンはバッチリ洗浄してありますよ〜。

 





ここのボルトは締めすぎ注意なんです。
トルクを掛けすぎるとパッキンが外にハミ出てきちゃうんです。





全ての部品を取り付けて完成です。
各部の洗浄とタペットカバーの塗装のおかげでとってもキレイになりました。
これで当分は安心して乗れますね。

今回のようにタイミングベルト交換のタイミングで
大がかりなメンテナンスをするのは理にかなったことだと思いますよ。
エンジンを降ろさない状態での作業ですと、
確実性とここまでの仕上がりは望めないと思います。
どうせエンジンを降ろすなら思い切ってリフレッシュしちゃいましょう!

 





最後に今回交換した部品たちです。
明らかにタイミングベルト関係以外の物が多いです。(笑
まあ、タイミングベルト交換の時にって言うのは一つのきっかけですよ!
これでまた10万km安心して乗れますから・・・