ロードスターのB6エンジンオーバーホール作業の紹介です。

★ロードスターB6エンジン オーバーホール★

ロードスター乗りの常連さんからの紹介でやってきたオーナーさん。
どうやらエンジンから白煙が出ているようです。
キャロルの時のように激しくは無いらしいのですが
シフトを変える時とかに「ポッ」っと噴くらしい。
症状から察すると、どうやらオイル上がりのようです。

一度中古のエンジンに載せ換えたらしいのですが
半年たらずでこうなったようです。
まあオーバーホールしないでそのまま載せたようなので
 しょうがないことなんですけどね。

今回はきっちりと直したいということで
ブロックをボーリングしてオーバーサイズピストンを組むことになりました。
本当はハイコンプピストンやらハイカムなどを組んで
パワーアップしたかったようなんですが、
オーバーホールだけでもけっこうな金額になるので今回はパス!

チューニングとなるとパーツ代に加えて加工代もはねあがるし、
燃調などのプラスアルファの予算が必要なんです。
しかも悲しいかなNAエンジンはかけたお金ほど
パワーが上がってくれないんですよ。
それならば純正パーツを使ってきっちりと組みなおして、
安心して回せる仕様にしてやろうということになりました。





まずはエンジンを車輌から降ろします。
FF車なんかだとミッションごと下に降ろしたほうが簡単なんだけど
ロードスターの場合はエンジンメンバーあたりの関係で
ミッションを先に降ろしてエンジンは上に抜きました。
ハチロクだとステアリングラックを付けたまま
エンジンメンバーごと下に降ろしちゃうんですけどね。





エンジンスタンドに固定してバラシ作業開始です。
ヘッドの中はわりとキレイですね。
オイル交換はきちんとされていたエンジンのようです。





ヘッドをはぐるとピストンにはキッチリとカーボンが。
オイル消費のせいでしっとりと濡れています・・・ 





オイルパンをはぐって、ピストンを抜く前に
「念のため」と思ってコンロッドを触ってみると・・・
カチャカチャカチャ・・・
「うぎゃ〜〜!キャロルと一緒じゃあ〜〜〜!!」





キャロルの時と違ってコンロッドメタル(子メタル)は
かなりヒドイ状態です。
オイル管理は良かったようなのになんでだろう?
オイル自体がショボかったのかなあ?





ピストンのサイド部分もキズまみれ。
まあ、子メタルがあんな状態ならピストンが
首を振るのでこんなになっても当然ですけど・・・





ちょっとピンボケでわかりにくいですが・・・
シリンダーにもちゃ〜んと痕跡が残っています。
ピストンが首振りしていたので、サイド部分だけが磨耗しています。
これだとオイル消費をするのもあたりまえですね。
オーバーサイズを使うことにしておいてよかった・・・





クランクメタル(親メタル)はとってもキレイ。
4A-Gでも親メタルはキレイなことが多いんだけど、
これを見るとオイルの質が悪かったとも思えないし・・・
となるとクリアランスあたりなんでしょうかねえ。
それとも回しすぎ?・・・

 



ヘッドを洗浄してチェックしていてビックリ!
なんと燃焼室の位置がズレてるじゃありませんか。
1・2番はまあまあ真直ぐなんだけど
3・4番は明らかにナナメになっています。
そのせいでバルブシート用の切削加工がハミ出しています。
ハイコンプピストンあたりを組むんだったら、
容積あわせが必須項目なんですけど、
この燃焼室の容積を合わすのは大変だろうなあ。
今回はノーマルピストンなのでやりませんけど・・・
聞くところによるとB6のヘッドはこういった
「ハズレ」がけっこうあるようなんです。
しっかりたのんますよマツダさん!

 



ポートの段付きもかなりのモンですねえ。
バルブ側、マニ側ともにけっこうな段差が・・・
こりゃあ加工も手間がかかりそうですなあ。
バルブシートの沈み具合も各気筒でバラバラだし、
燃焼室のズレといい、造りが悪いの一言ですね。

 



ポートは段付きを滑らかに仕上げる程度で拡大はしていません。
表面もザラつきをさらうぐらいで、鏡面加工はしていません。
でも元の状態を考えるとかなり効率は良くなってるでしょうね。

 



こちらはEXポート。
基本的にはINポートと同じ仕上げ具合です。
カムやピストンがノーマルなので、これでもやりすぎぐらいかも・・・

 



ヘッドは面研をしてあります。
今回はオーバーホールが目的なので修正程度の面研量です。

 



バルブ側の段付きもキレイに無くなっています。
本当はもっと簡単に終わらせるはずだったんだけど、
やりはじめるとついつい・・・

 



バルブもカーボンを落してキレイになりました。
EXバルブのカーボンは焼き付いているので
落すのがけっこうたいへんなんですよねえ。
 

 



すり合わせができたらバルブを組付けます。 
B6エンジンにはラッシュアジャスターが付いているので
ノーマルのバルブスプリングがけっこう硬いんです。
いつも使っているスペシャルコンプレッサーが使えないので
一般的なコンプレッサーを使って組付けます。
スペシャルコンプレッサーは4A-Gの強化品ぐらいなら楽勝なんだけど
B6のノーマルスプリングはそれよりも硬いようです。
シムタイプのタペットに交換してスプリングを柔らかくすれば
フリクションロスが減って、よく回るエンジンになるだろうな〜。

 



バルブ組付け完了です。
カーボン落しの時にバルブもちょこっと磨いてあるので
見た目はバッチシ仕上がってます!
でも組んだら見えないんだけどね。

 



続いてブロックの登場。
オーバーサイズピストンを使用するのでボーリングしてあります。
加工はもちろん「戸田レーシング」さんで。
ヘッドとの密着性を上げるため、ブロック上面も面研してあります。

 



ピストンリングは合口すき間の調整をしてから
ピストンに組付けます。
ピストンは同じサイズの物でも微妙な寸法の誤差があるんです。
その微妙な誤差(1/100ミリ単位ですけど)にあわせてボーリングを
してくれているので、ピストンを組む場所に指定があるんです。
ピストンの頭に貼ってあるテープがその番号です。
当然リングの合口すき間もその気筒に合せて調整します。

 



続いては親子メタルのクリアランス測定。
新品のメタルを使って測定してやります。
各気筒ともバラつきはなくOKですね。

 



圧縮を上げていないので(微妙には上がってますが)ガスケットは
ノーマルでいきました。 

 




ヘッドを載せてカムや補機類を組んでいきます。
このへんになるとドンドン作業がすすみますねえ。 

 



またまたB6の欠点を発見。
なんとクランクキーがキー溝から飛び出してしまっています。
キーがちゃんと奥まで入ってないわけじゃないんですよ。
クランク自体が短いんです!!
タイベルプーリーも規定の位置まで入っているんですが、
クランクの突き出し量はほんの5ミリ程度。

 



クランクプーリーを付けるとごらんのとうり・・・
これじゃあ強度的にちょっとマズイでしょう!
またまた聞くところによると、けっこうココのトラブルは多いようです。
クランクを長く加工した対策品も発売されているらしいです。
ノーマルパワーのままなら問題無いという
考え方なんでしょうかね、マツダさん!

 



インマニもちょこっと加工してやりました。
スロットルボディが付く部分を滑らかに磨いてやってます。

 



ポート側も段付きを無くして、表面を磨いています。
仕上げ具合はヘッドと同程度ですけど。
簡単に工具が入る部分だけなんですけどね。

 



フライホイールは1800cc用のクロモリです。
NAエンジンで軽量フライホイールは効きますからねえ。

 



もちろんクラッチも1800cc用です。
純正品ですから扱いやすさはもちろんノーマル。
だけど容量はアップしてるんです。
カリカリにパワーアップするともたないでしょうけどね・・・

 



エンジンを積み込んで作業終了です。
エンジン内部の消耗部品はほとんど交換してあるので
新品エンジンのようになりましたよね。
なにしろブロックまでボーリングしたんだから。

これで白煙ともオサラバ!
ガンガン走って楽しんでくださいね。
でも日頃のメンテナンスは忘れずに!
それと回しすぎに注意・・・かな