ジムニーのトランスファーオーバーホール作業の紹介です。

★ジムニー トランスファーオーバーホール★

常連のお客さんが通勤用に買ってきたジムニー。
走行中の異音に悩んでいました。
「なんかミッションのあたりから音がでてるんだよなあ」
タイヤの回転数に合わせてウナリ音のような音が出るようです。
確認しようとしてもリフトの上で回してみるだけではちょっと・・・
アチコチからの音が多すぎてどこから出ているのかが判断できません。
たしかにミッション周辺ではあるのですが。

シフトの入りも悪かったのでミッションの
オーバーホールをしようかと言うことになりました。
当然ベアリングやシンクロなどの消耗部品は全交換。
でも不安な面が・・・

「シフトの入りは確実に良くなるけど、
異音はやってみないとわからないから、消えないかもしれないよ。」
と、お客さんには話したんだけど・・・
 「それでもいいからやってみてよ!」という希望で決行!

その結果、予想どおり異音は残っちゃいました。
もちろんシフトの入りはとっても良くなりましたけど・・・
こうなるとオーナーさんも後には引けません!
「何としてでもこの音を消したい!!」

次に怪しいところは・・・
ということでトランスファーをオーバーホールです。





ミッションのオーバーホールでもけっこうな金額がかかったんですが
今回もそれなりの出費が必要です。

興味の無い人から見れば
「こんな古い車にお金かけてどうするの?」
と思うでしょうが・・・

じつはこの型のジムニーってけっこう人気があるんですよ。
同年式の他の軽四から比べると、
かなりの高値で取引きされているんです。
だから安いタマを探そうとすると・・・
どうしても訳アリ車を買うしかなくなってしまうんですよねえ。

この車もけっこう安かったので
本人も嫌な予感はしていたようです。
「でも、買ったからには気持ちよく乗りたい!」
通勤で毎日使う車ですから、その気持ちはわかります。

「動けばイイっていうゲタ代わりなら、ジムニーなんか買わないよ!」
ごもっとも・・・
ということで少々お金がかかっても、
気に入らない所は直したいようです。

さあ、トランスファーのオーバーホールで異音は消えるのか?





これがトランスファーです。
コレがやってる仕事というのは・・・
ミッションからの回転(駆動力)を前後のデフに分配するんです。
この車は「2WD」と「4WD」が切り替えられますので、
2WDの時はリアのデフだけに、
4WDの時には前後に・・・といった風にです。





このトランスファーにはプロシャが3本繋がってます。
赤い矢印がミッションからの入力です。
黄色がフロントへの、緑がリアへの出力になります。





さあ、それでは作業開始です。
まずは本体を車から降ろします。
それにしてもよく汚れてますねえ〜。
年式を感じさせる汚さです。





さっそくバラシに掛かります。
ミッションに比べればギアの数は少ないのですが、
構造はそれなりに複雑です。





取り外された部品たちです。
今回はギア等は交換予定はありません。
ベアリング等の消耗部品だけでOKでしょう!
という予測のもとに部品を注文しました。

ミッションのように頻繁にシフトをするのであれば
ギアの傷みも出てきます。
でも、トランスファーは2WDと4WDを切り替える時ぐらいしか
シフトをすることはないんですよね。

そんなのって年にせいぜい1〜2回ですよね。
(ダートを走りにいってる人は別ですが・・・)
それぐらいだとギアはまずOKでしょうとの判断です。





予想どおりギアはまったく問題無し!
通常ではギア本体の歯が痛むってことは無いんです。
ハイパワー車でパワー全開で走ったり、サーキットやジムカーナを
ガンガンやってたりした場合は別ですが・・・

「ギアが傷んでいる」っていうのは
ギア本体の歯ではなく、上側の逆ホームベース形状の部分が
磨耗したりして変形した状態を言うんです。
ここが変形すると、シフトが入りにくかったり、逆にシフト抜けが出たりします。





先ほどのホームベースと噛み合う相手の
ハブスリーブもキレイなもんです。

ミッションのオーバーホールでは
ここが変形していて、交換になるケースが多いですね。
いくらシンクロを新品にしても、ここが傷んでいると
シフトの入りにくさは改善されませんからね。

 



お〜っと、ここで不具合発見!
なんとカラーにクラックが入っているじゃありませんか!!
このカラーはシャフトに嵌ったベアリングを押える役目をしています。
異音には直接関係していないとは思いますが・・・
元々交換するつもりで発注してあったので問題無し!

 



お次は予定外の不具合です。
スピードメーターのドリブンギアにキズが入っています。
しかも若干首振り状態にもなっていますねえ。

これも異音とは直接関係ないと思いますが・・・
再使用しようと思えばできないことはないんですが、
この車のトランスファーなんて2度とバラすことは無いでしょうから交換です。

 



予定外の部品注文で作業がストップしちゃったので
真っ黒によごれていたケースを洗ってみました。
どうです、キレイになったでしょう!

 



部品が入荷したので作業再開です。
ドリブンギアが傷んでいたので、ドライブギアもセットで交換。
ベアリングやカラーも当然新品です。

 



ベアリングやオイルシールを交換しながら
シャフトやギアを組み込みます。

 



プロシャのフランジを取り付けて組付け完了!
洗浄のおかげで作業前と同じ物とは 思えないほどキレイ。

 



トランスファーのマウントも交換です。
エンジン・ミッションマウントは以前に交換してあるので
これでマウント関係は完璧ですね!
 

 



トランスファーを車に搭載して完成です!

さて肝心の異音は?
車をリフトで上げて、回してみると・・・
おっ、あきらかに騒音が少なくなったゾ!!

作業前はどこから出ているのかわからない、
いろんな種類の騒音がかなり多かったのですが
かなり全体の音が小さくなっています。

「こりゃ、期待が持てるかも!」
さっそくオーナーが試乗に・・・

結果は・・・・・・・・ OK!!
いつも悩まされていた速度域でも音が出ないようです。
はあ〜、よかったねえ。

 



今回交換した部品です。
ベアリング・オイルシール・マウントといった
消耗部品が中心です。
ドリブンギアという予定外もありましたが・・・


外したベアリングを手で触ってみると、
「ゴリゴリ」といった違和感が・・・ 全然ありません!

それでも異音が消えたと言うことは
触った感触だけではわからないっていう事なんですよね。
だから異音の修理は難しい!


今回は無事消えてメデタシ、メデタシ。
バラシてチェックしても判断はできなかっただろうから
全交換で結果オーライ。
「やってみないとわからない」と言うのは
こういった事情があるんですよね〜〜。