キャロルのエンジンオーバーホール作業の紹介です。

★キャロル白煙モクモク、エンジンO/H★

FDに乗っているおなじみのニノさんは
セカンドカーとして平成4年式のキャロルを持っています。
今回そのキャロルにトラブル発生!
「朝、エンジンをかけたら白煙が出るんですよ〜〜」とのこと。
しばらく走っていると白煙は消えるらしいので
いわゆる「オイル下がり」ってヤツですね。

オイル下がりは「ステムシール」という部品がヘタって
起こることが多いので、交換ついでにヘッドもオーバーホール!
まあ年式が古いだけにちょうどオーバーホールの
 時期でもありますしね。
「セカンドカーに金はかけたくない!」というニノさんの要望で
ステムシールやヘッドガスケットなどの
必要最低限の部品交換で作業をすることに・・・





部品が揃ったところで車が入庫。
ところが来てビックリ!
予想以上の白煙モクモク状態です!!
「お〜い本当に走ったら煙は消えてたのか〜?」
なにしろ3分ほどのアイドリングで工場の中は真っ白け。
火事と間違われそうなぐらい煙が充満しちゃいます。
「こりゃあオイル下がりじゃないかも・・・」という
いやな予感を打ち消しながら作業開始です。





タペットカバーをはぐってさらにビックリ!
「な、なんじゃコリャ〜〜〜〜〜〜〜!!」
ここまで汚いエンジンもなかなかお目にかかれんゾ。
前オーナーはちゃんとオイル交換していたそうなので
犯人はそれ以前のオーナーたちですね。
まあ、オバちゃんなんかだったらムリないのかも・・・





ヘッドのほうもご覧のとうり。
触るのがイヤになるぐらいきちゃない。
「白煙出ててもあたりまえか・・・」と思うぐらいの状態です。





ヘッドをおろした状態です。
予想外にピストンはさほど汚くありません。
シリンダー内部に流れ込んだオイルで洗われていたんですかねえ。
シリンダーの内壁にもキズはなくわりとキレイです。
やっぱりヘッドに原因があるんでしょうかね。





それに比べて燃焼室はこのありさま・・・
オイルが焼けてカーボンビッチリの状態です。





バルブのカーボンをちょこっと削ってみると・・・
「おいおい、1mmぐらい厚みがあるんじゃない?」





ポートの中はさらにヒドイ!!
いったい何mmぐらいの厚みなんじゃ?
というぐらいカーボンが堆積しています。
バルブのステムもオイルでドロドロ。





外したバルブです。
カーボンとオイルでヒドイ状態。

 



ポートから出てきたカーボンです。
なんとこれで約1気筒分。
全気筒のカーボンを合せると
「ボンネットはムリでもカナードぐらいは作れるんじゃない?」
というぐらいの量になりました。
おかげさまで洗浄作業はとっても時間がかかりました・・・

 



どうです、洗浄後のバルブです。
とってもキレイになりましたよ。

 



燃焼室もこのとうり。
バルブのすり合わせもやって、いよいよ組み付けにかかります。

 



問題のステムシールです。
ヘッドの汚さに圧倒されてすっかり忘れてましたが
そういえばオイル下がりとは思えないほどの白煙じゃった・・・
「ステムシールが原因であってくれ〜〜!」
と祈りながらの組み付け作業です。

 



バルブスプリングも組み付けてヘッドの完成です。
それにしてもキレイになりました。

 



オーバーホール前と比べるとこんなに違います。
同じエンジンのヘッドとは思えんなあ。

 



ヘッドを載せてカム等を組み付けます。
バルブクリアランスもキチンと調整してやります。
少排気量の小さいヘッドなのに
1カム4バルブの機構なのでヘッドの上はかなりゴチャゴチャ。
調整するのも、とっても面倒くさい!
調整がおわればあとは補機類を装着して完成。
さあ運命の瞬間です。
「白煙が出ませんように!」と祈りながらキーをひねります。

キュキュキュ〜ン・・・ブオ〜ブオ〜〜ン
モクモクモク・・・・・・・・
ガ・ビ〜〜ン・・・白煙は止まっていませんでした。(涙)
「やっぱし、走ったら消えてたというのはウソじゃったな〜!」

ヘッドをオーバーホールしてもダメっちゅうことは
腰下が原因なんですよね。
でもシリンダーにはキズは無かったから
ピストンリングが折れているとは思えんし、
ピストンヘッドにクラックも無かったから
ピストンも問題無いじゃろうし・・・
あとはリングのヘタリぐらいかな?
でも白煙は短期間にひどくなったというから、
リングがそんな急にヘタるかなあ?
しかも全気筒同時に?
(燃焼室の汚れは全気筒同じだったからね)

あれこれ考えていてもしょうがないので腰下をバラすことに。
 

 



まずはオイルパンをはぐって。 
コンロッドのナットを緩めようとしたところで「アレッ?」
手で触っただけで「カチャカチャ!」
ン?もう一度。
やっぱり「カチャカチャ!!」
なんで手で触っただけでコンロッドが動くんじゃ?
まさかナットが緩んでいるのじゃないかと思い確認すると
ちゃ〜んと締まっています。
でもコンロッドは「カチャカチャ!!!」
「ウソじゃろ〜〜!こんな原因思いつかんよ〜〜〜!!」

 



コンロッドを外してメタルを見てみると・・・
両サイドの部分だけが異常に磨耗しています。
いろいろエンジンはバラしたけど
こんなメタルは初めて見ました。
これじゃあコンロッドもカチャカチャ動くわな。

 



ピストンリングはさほどヘタっていないようです。
どうやらコンロッドメタルのガタのせいで
ピストンが首を振りながら上下運動するので
シリンダーが楕円に磨耗したんだと思われます。
だんだん楕円度が増していってピストンリングが接触できる
限界を越えた時から白煙モクモクが始まったんでしょうね。
メタルの磨耗は前々から起こっていたんでしょうけど
ピストンリングがギリギリまでがんばっていたので
急に症状がでたんでしょう。

 



改めてシリンダーを確認しても
大きなキズはまったく無く、パッと見はキレイなもんです。
ボアゲージでも使って「テーパー度」や「真円度」を測らないかぎり
ヘッドを降ろしただけの状態では判断できないでしょうね。
通常目視で異常がなければそのままいくもんねえ。
だって足グルマのオーバーホールであって、
チューニングエンジン組んでるわけじゃないんだし・・・
↑これって言い訳?

まあ、こんなこともあるんだ!と勉強になりました。
ボーリングしてオーバーサイズを入れるとなると
お金がかかるので、中古のブロックを段取りして交換しました。
中古っていうのが気にかかりますが・・・

 



で、作業中に他のトラブル発見!
なんとエンジンマウントが見事に切れています。
「そういえばアイドリングの時、エンジンがガタガタいってました。」
と、ニノさんの弁。
古い車ですからゴム関係のトラブルは
当然といえば当然ですけどね。

 



エンジンマウントも新品になってこれでバッチリ?
あとは中古のブロックがどれぐらいもってくれるかですね。
あっ、そうそう中古のブロックとはいえ
メタルとピストンリングは新品に換えてますよ!