S2000 デフトラブルの紹介です。

★S2000 デフが割れちゃった〜!★

当店の走行会でいつもインストラクターとして
同乗走行をしてくれているS社長のS2000。

2007年11月の走行会でデフにトラブルが発生!

いつものように参加者の1人を乗せて走行中
バイパーコーナーの立ち上がりでアクセルを踏んだとき
バキッ〜〜!!
と、なんかとんでもない音が・・・

その後、あきらかに車の挙動がおかしくなったので
そのままピットイン。
ピットに戻って確認すると、デフのあたりからオイルが・・・

と、言うことは当然ながらコース上にオイルを
撒き散らしちゃったってことなんですねえ。
そのオイルに乗ってスピンするクルマが続出。
さらにスピンした車を避けようとしてコースアウトまで・・・
コース上は大混乱でついに赤旗中断になってしまいました。

あとで判ったことなんですが、S2000のデフは
キャリア部分がパックリと割れていたんです。
キャリアが割れちゃったもんだから、中にあったデフオイルは
一気に外へ大放出!!
コース上にブチ撒けちゃったってかっこうです。

オイルフラッグは振られていたものの
そこまで大量のオイルがあるとは思いませんよねえ。
しかもコース上のオイルって見えにくいし・・・
スピン・コースアウトされた方々にはご迷惑おかけしました。

キャリアが割れたままだと動かすこともできないので
とりあえずノーマルのキャリアと載せかえることになりました。

トラブったキャリアを降ろしてビックリ!
ここまでヒドイとは・・・



 

車載状態で下から見た写真です。
鋳物のキャリアがパックリと割れています。



 

降ろしてみると上側もパックリ!



 

サイド部分にもクラックが・・・
縦横に亀裂が入っているって状態ですな。
いままでこんなことになったデフキャリアは見たことないよ!





割れていなかったリア側のアルミカバーを外すと
ご覧のようにキャリアは真っ二つ!
もう、お見事としか言いようがありませんね。
しかし、いったい何が原因なんだろう?



 

リングギアもボロボロ。
まあ、キャリアが割れた状態でいくらかは走行しているので
これぐらいは当たり前ですかね。
でも歯が欠けてる部分もあるので元々トラブっていたのか?



 

ピニオンギアを確認していて発見!
矢印の部分にあるディスタンスカラーが
「カチャカチャ」と遊んでいるじゃあないですか!!
普通この部品は二つのベアリングに挟まれて動かないはずなんです。
それが動くってことは、ここにトラブルの原因がありそうです。

  本来この部品は筒状のカラーをベアリングの間に入れて
ベアリング間の寸法を固定する物なんです。
フランジのナットを締めていくと
ベアリングが押されてカラーに圧力がかかります。
この圧力でカラーが少しずつ潰れるんです。
(矢印の部分が膨らんでいますが、これが潰れた部分です。)

 

これはFD用の純正ディスタンスカラーです。
組み込まれていたカラーは新品に比べて
潰れているのがわかりますか?

こうして規定値まで潰れた状態で
ベアリング間の寸法を固定してやるんです。
カラーが潰れすぎるとベアリングに圧が掛かりすぎて
ピニオンギアの回りが重くなり、
反対に潰れが少ないとガタが出てしまいます。

FR車のデフではほとんどこのカラーが採用されています。
当然ハチロクやFDも同じ構造になっています。
ただ、このカラーはハード走行のネックでもあるんですよねえ〜。

ナットにトルクを掛けると潰れるってことは
カラーの肉厚はそんなに厚くないってことなんですよ。
ハードな走行を繰り返していると
リングギア側からピニオンギアに強い力が加わります。
そうすると、 その圧力に負けて変形してしまうことがあるんです。
(熱による変形もあるようです。)

カラーが変形するとベアリング間の寸法が変わってしまい
バックラッシュの変化や、歯当りの狂い
いったようなトラブルの原因になります。
このトラブルの対策として肉厚の厚い
強化品のカラー
いろんなメーカーから発売されているんです。

 

この写真はJ'sレーシングのS2000用カラーです。
S2000の ノーマル品はFDの物とたいして変わりませんから
J'sのカラーはかなり肉厚が厚くなっています。
これだけゴツイと少々では変形しないでしょうねえ。

ただし、厚くて潰れないと言うことはこのカラーだけでは
寸法の調整ができなくなるってことです。

 

専用のシム(矢印部)を使用して寸法を調整するんですが
あらかじめ数種類の厚みのシムを用意しておく必要がありますし
入れては測り、また入れ替えては測り、を繰り返さないといけないので、
調整にすごく手間がかかるんですね。
だからレース用の車輌や本気モードの走り屋さんは使っていても
一般的にはあまり知られていないんですよね。

今回もこれが原因かな〜と思ったのですが・・・



 

フランジを外そうとした時のこと。
「ん?なんかナットの締まりが浅いような気がするゾ・・・」
ノーマルのデフと見比べてみるとあきらかに違います。
ってことはフランジのナットが緩んだのか?

このトラブったキャリアはギア比の違うファイナルを組んだ中古品を
S社長が持ってきて載っけたものなんです。

ファイナルを組むときにナットの締め付けが甘かったのか、
はたまたセルフロックナットを再使用しちゃったのか・・・
( カラーが潰れてガタが出たので緩んだという可能性も無くは無いですが。)

とにかくこのナットが緩んだことでピニオンギアが
ガッコンガッコン動くようになってしまい、
リングギアと噛みこんじゃったんですね。

そこにアクセル全開にしてフルパワーを
掛けちゃったもんだから、その力は逃げ場を失って
キャリアがバキッ〜〜ってことになったんでしょうね。



 

 ナットがユルユルでしたから、フランジは簡単に外れました。
規定トルクで締まっているとけっこう固いんですがね。



 

とりあえず動かせるようにするため
中古のノーマルデフをそのまま載せました。

次回走行会に出る前にはどうせ
「ノーマルデフじゃあ走れんよ〜!」とか

「ファイナルもノーマルじゃあ加速が悪り〜よ〜!」とか
言ってくるに決まっていますよね。

今度は最初っからウチの店でキッチリ組みましょうね!
もちろん、強化品のディスタンスカラーは使って組みますよ。
その分工賃は覚悟しておいてね、S社長!