シビックのB16Aエンジンオーバーホール作業の紹介です。

★シビックB16Aエンジン オーバーホール★

EG9のフェリオのお客さんからオーバーホールの依頼が。
車をサーキット専用車にするんだけど
どうもパワーに不満があるらしい。
それもそのはず、この車は10万キロを軽〜くオーバーしています。
そこで走行距離の少ないエンジンをオーバーホールして
載せ変えることになりました。

サーキット専用車といってもカリカリにしたい訳ではなく
楽しく、長〜く乗りたいとのこと。
となればお得意の「純正パーツ使用のファインチューニング」!
 ノーマルCPUの守備範囲内でいけるように
ハイカムなどは使わないで、フリクションロスを減らして
NAらしく気持ちよく回るエンジンに仕上げましょう!





タペットカバーを開けると中はかなりキレイ。
きちんとオイル交換されていたエンジンのようです。
エンジンはもちろん中古だから、前オーナーがどんな人かはわかりません。
ここで当たり・ハズレっていうのもあるんですよねえ。
今回は当たりだったのかな?
まあ、中を開けてみるまではわかりませんけど・・・





ヘッドを外してピストンを確認。
年式相応といった具合のカーボンですかね。
ブロック側面はヘッドあたりからにじんだオイルでけっこう汚れています。
オイルとホコリが混ざって堆積してるとこも・・・
洗浄に手間がかかりそうだなあ。
エンジンの洗浄ってけっこう時間がかかるんですよ。





シリンダーにも大きなキズは無く
まあまあこんなもんじゃない?って感じの程度です。
今回はボーリングをしないので、大きなキズがあったらアウトでしたからね。





ピストン自体もキズはほとんどありません。
カーボンやオイル焼けで汚れてはいますが
ちゃんと洗浄してやれば再使用もOKでしょう。





クランクメタル(親メタル)はとってもキレイ。
この手の4気筒エンジンだと、ほとんど親メタルはキレイですね。





コンロッドメタル(子メタル)のほうは、大きなキズは無いものの
当たりがちょっと偏っているようですね。





洗浄後の燃焼室です。
バルブシートの機械加工で若干の段付きはあるものの
気筒間のバラつきも無くけっこうイイ仕上がりです。





ポートの段差も最小レベルかな。
さすがエンジン屋のホンダさんですね。

 



ロードスターのヘッドと並べてみました。
ヘッド自体は若干B16Aのほうが大きいです。
VTECなので大きいのだろうとは思ってましたが
予想ほどではなかったですね。
燃焼室の大きさはさほど変わらないのに
バルブの大きさが全然違います。
バルブとバルブの間の寸法をみれば違いがよくわかります。

 



それよりも驚きなのはポートの大きさです。
ロードスターのポートに比べて横幅はさほど変わらないのに、
縦の寸法は1.5倍ぐらいあります。
面積にすればかなりの差になるでしょうね。
ノーマルでもハイパワーをしぼり出すには
これぐらいのポートが必要なんでしょうね。
まるで2リッタークラスのポートみたい・・・

 



こちらはEXポート。
やはり縦の寸法が全然違います。
真ん中の隔壁もB6に比べるとかなり薄い!(特にIN側)
B6は加工後の写真ですからノーマルよりは薄くなっています。
それでもこの差ですからパワーに差がでるのも当然なんですかねえ。
後からやる加工には限界がありますから、
元々の素性の違いはどうしようも無いですよねえ・・・

 



今回もファインチューニングなので鏡面加工まではやっていません。
ロードスターと比べれば段付きは少ないですが、
やはりノーマルですから削らないとだめな部分はけっこうあります。
効率が良くなればVTECパワーに拍車がかかりそう・・・

 



こちらはEXポート。
仕上げ具合はINと同程度。
もともとポート径はデカイので拡大はしていません。

 



バルブもカーボンを落して洗浄してあります。
すり合わせをして、組付けます。

 

 



オーバーホール時には面研は必須です。 
特にメタルガスケットを使う場合には面研をしていないと
ガスケットとの密着性が悪くなり後々トラブルの原因になっちゃいます。

 



今回はピストンを再使用するのでボーリングはしませんが
シリンダーの磨耗もほとんどなく、基準値内に収まっていました。
ピストンリングは新品に交換するので
合口すき間の調整をしてやります。

 



洗浄後のピストンにリングを組付けます。
きっちりと洗浄してやったピストンはまるで新品のよう?

 



メタルクリアランスはとっても重要なポイントです。
ここをしくじってしまうと、エンジンが回らなくなったり
耐久性が落ちてしまったりするので慎重に。
きっちり調整するためには、厚みが何種類かあるメタルを
余分にそろえておく必要があります。

 



メタル合せが終われば、クランク・ピストンを組付けていきます。
ブロックもキレイに洗浄してあるので、作業をしていても気持ちがいい。
でもさすがにブロックの洗浄は時間がかかりましたよ。
なにしろこびりついた油汚れが落ちてくれないもんですから・・・

 



組みあがった腰下です。
ブロックもピストンも新品みたい。

 



ヘッドを載せたらエンジンらしくなってきます。 

 



VTECエンジンはカムの周りがけっこう複雑です。
ロッカーアームやらカムホルダーやらで、部品点数が
普通のエンジンに比べてかなり多いんですよ。
これはNSXもシビックも同じですね。

 



タイミングベルトは戸田レーシングの強化品です。
鮮やかな色がそそります。
タペットカバーを付けると見えなくなっちゃうんですけどね。
オーナーさんはタペットカバーの前部分をカットしてやって
見えるようにしようかと計画中らしいです。
(これを見てしまうとそういう気持ちになるでしょうね。)

 



カムスプロケットも戸田レーシングのスライド式に交換しました。
ノーマルカムですが、面研もしてますしどうせならきっちりバルタイを
合せてやりたいですからね。
サーキット専用車ですので、タイプRのバルタイを参考にして、
ちょこっと高回転仕様のバルタイにセッティングしてやりました。

オーナーさんのサーキットインプレッションです。
とりあえず良く回るようになったとのことです。
とくにストレートでの車速の伸びは全然違うようです。
おかげでベストタイムも大幅更新です!
お金をかけたかいがありましたね!!