FD3SのTO4Sタービンをオーバーホールした作業の紹介です。

★TO4Sタービン オーバーホール★

2年程前にTO4SシングルタービンにしたHi君のFD。
その後快調にハイパワーを楽しんでいたようなのですが・・・

最近になってどうも調子が悪いらしい。
ちょっと前からタービンとフロントパイプの間の
ガスケットが抜けて排気漏れするという症状が頻発!
その都度新品ガスケットに交換していたんですが
すぐに再発してしまうんです。

「何が原因なのかな? ガスケットの材質が悪いのか?」
等と話していたんですが、今度は違う症状が・・・
「最近ブーストの掛かりが悪いんですよ〜。」
当然ながらパワーも落ちてしまってるようです。

「そろそろタービンのオーバーホールを考えんといけんかもよ!」
って言ってたら・・・
「マフラーから白煙がすごく出だした〜〜〜!」との連絡。
エアクリーナーもオイルでベトベトらしい。

「こないだディーラーでオイル交換したのがマズかったのかな〜?」
どんなオイルを使ったのか訊ねたところ・・・
「知らない・・・」との返事。
おいおい、ノーマル車じゃないんだからね〜〜!

「こりゃあもう、オーバーホール確定ですね」
オーバーホールでいける程度の状態であってくれればいいのですが・・・
タービン交換なんて事になるとかなりの出費が必要です。

ガスケット抜けの頻発はタービンが逝く前兆だったんでしょうか?
そう言えばタービンハウジングやフロントパイプが
けっこう低い回転数から真っ赤っかになってたんですよね〜。
その熱のせいでガスケットが持たないんだとばかり・・・

おそらくシャフトの回転が重くなってきて、
タービンが排気の抵抗になってしまったので熱量が増えたのかと。
それで低い回転数から真っ赤っかになってたんでしょう。

という事で作業実行です。

 

かなりの白煙が出ています。
おそらくシャフトのガタがひどく、シールがボロボロになって
タービン潤滑経路のオイルが排気系にダダ漏れなんでしょうね。

エアクリーナーを外すとオイルが滴るほど・・・
インテーク側のシールもボロボロになっているようです。

 

オイルと排気漏れのせいで真っ黒けのタービンです。
こりゃあ相当な重症みたいですね。

 

タービン内部も真っ黒ですね〜。

 

こんだけガタがあれば、そりゃあオイルも漏れるわな!
もうシャフトのベアリングはガタガタなんでしょうね。

さっそくオーバーホール業者さんに送ったところ・・・
オーバーホールは可能との返事に一安心!
しかしながらセンターハウジング部分は新品にフル交換とのこと。

でも、金額は思ったよりはリーズナブル。
ハウジング以外の可動部分が全部新品になるわけですから
安心感は大きいですよね〜。

で、タービンが帰ってきました!

 

なんとハウジングもめちゃくちゃキレイじゃないですか!
サビで真っ赤だったエキゾーストハウジングもキレイになってるし、
コンプレッサーハウジングなんか新品みたい。

さすがプロの仕事ですね〜。

(でも、この後驚愕の事実が判明します。)

 

センター部分は全部新品になっています。
もちろんタービンブレードも・・・

 

今回交換したセンター部分のパーツです。
ベアリング部分はかなりヒドイ状態になっていましたね〜。

 

サビが落とされキレイになったエキゾーストハウジング。
ややクタビレ感は漂ってますが(笑)
全然OKレベルなんじゃないでしょうかね〜。

と、満足しながら眺めていたら・・・
とんでもない事を発見してしまいました!!
サビてた時には全然気が付かなかったんですよね〜。
これもキレイになったおかげでしょうか。

 

ハウジングのフロントパイプ固定用のフランジ部分が
反り返って変形しちゃってます!(赤矢印)

フロントパイプを固定するボルトが付く部分なので
引っ張られるようなかたちで変形しちゃったんでしょうかね〜。
フロントパイプのフランジの厚みに比べて
ハウジングのフランジはあきらかに薄いですからね。

ガスケット抜けの原因はどうやらコレのようですね。
フランジの厚さの違いに加えて、異常な熱がかかったんで
徐々に変形しちゃったと思われます。

でも、HKSさんももう少し強度面とかを考慮して
厚めのフランジを使って欲しいですよね〜。
フロントパイプのフランジは倍ぐらい厚い物を使ってるわけですから。

 

反りを修正して、溶接で補強をしてやりました。
素人溶接なんで見た目の悪さは・・・
これで少しは強度も出たことでしょう!

本当は新品にすれば良かったのでしょうが、
予算の都合もありますので。
けれど同じ症状(ガスケット抜け)が再発した場合には、
交換してやらないとダメでしょうね〜。

 

フランジのネジ穴もけっこう傷んでいたので
ボルトでの固定方式からスタッドボルトに変更。
傷みが特にひどかったところは
スタッドボルトをフランジに溶接しておきました。

この変更にともない、遮熱板のステー等の加工も必要です。

 

タービンの装着完了。

 

で、ここからは追加作業です。

今回タービンが逝った原因をオーバーホール業者さんに訊ねると・・・
「熱のせいです!」と一言!!

TO4は元々ディーゼルエンジン用のタービンなんです。
その昔このタービンが出始めた頃はドッカンターボだったので
「なるほどディーゼル用だからか!」と納得してましたが、
最近はレスポンスもすごく良くなっているので
てっきりガソリンエンジン用になっているものだと思ってました。

ところが「今も昔も基本構造は全く変わってないよ!」とのこと。
ベアリングの材質や羽根の形状で
レスポンスを良くしてごまかしているだけだとか・・・

高圧縮比で排圧の高いディーゼルは低い回転数で
タービンをブンブン回せるので、熱の影響はほとんど無いんだとか。

ところが圧縮を低くしたガソリンエンジンで
でかいタービンを回そうとすると、どうしても高回転が必要です。
そうなると熱量が増えるのは避けられませんね。
さらにレシプロより排気温度の高いロータリーだとなおさら・・・

その業者さん曰く
「このタービンをロータリーに使うこと自体無理がある」
ええ〜〜、そんな〜〜・・・

でも他に選択肢が無いからしょうがないんだとか。
市販のタービンキットのタービンだと
どれもこれも似たり寄ったりなんだそうです。
TO4Sだけじゃないんですね〜。

じゃあ、ガソリンエンジン用のタービンは無いんでしょうか?
有るには有るんですが、値段が・・・
耐熱性が高く、高回転対応のタービンは基本構造から違うらしい。
そういったタービンを使っているのは
アメリカのインディーレースやWRCとからしい。

1個ウン百万円もするので、とてもタービンキットで
使えるようなレベルじゃないんだとか。
たしかに車より高いタービンキットなんて
誰も買いませんよね。

 

そういった部分を踏まえて
タービンの寿命を少しでも延ばすための加工をしました。

熱の影響を抑えるためにタービンを冷やす!
ところがTO4Sは水冷式ではありません。
水冷にできないのなら空冷で!

と、言うことではありませんが導風板を作って
タービンに風を当ててやることにしました。

お得意のアルミ板加工のワンオフです。
キツキツのエンジンルームでなるべく多くの風が取り込めるように
分割式にして、はめ込んでから組付けます。

 

取付け場所はココです。
なるべく広い面積で風が取り込めるように
ギリギリの大きさで作ってあります。

 

実際に風を取り込む部分はラジエターの後方です。
ラジエターを通過した熱い風ですが
何百度にもなるタービンを冷やすには問題ないでしょう!

さらにこの車はエアロボンネットを装着しています。
うまい具合にちょうどタービンの上あたりに
アウトレットの穴が開いているんですよね〜!!

下から入った風がタービンを冷やしながら上に抜けていく!
おお〜、バッチリじゃないですか!
我ながら感心、感心。

 

正面から見るとこんなカンジです。
遮熱板の奥にタービンが見えているのがわかりますか?
もちろんエキゾースト側にも風が流れるように
工夫してありますよ〜〜!


さて、実際の効果ですが・・・
耐久性に対しての効果がわかるのはけっこう先になりますよね。
ただHi君の印象によりますと
ボンネットを開けた時の熱量が全然違うそうです。
タービン廻りから「ムア〜〜ッ」と来ていた熱さがほとんど無いらしい。
こりゃあ、期待が持てそうですね〜〜!