ホイールアライメント作業工程の紹介です。

★アライメントの作業工程★


「アライメントってよく耳にするけど、実際にはどんな作業なの?」
こういった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
サス交換が合法化されたことにより
多くの方がローダウンをされるようになってきました。
「ローダウンをしたらアライメントもセットで!」
というのは今や常識となっていますよね。

でも作業風景を見たこと無いって人は多いんじゃないかな?
サス交換と同時にすることが多い作業なので
トータルでけっこう時間がかかるから、ほとんどの人が
クルマを預けて終了後に引き取りってパターンだと思います。
だからどんな作業工程なのかは知らないのは当然ですよね。

そこでアライメントについてもっと知っていただくために
当店での作業工程をご紹介します。





これが当店のアライメントテスターです。
昔の物に比べたらかなりコンパクトになっています。
たったこれだけの機械ですが、なんと高級乗用車が
買えるぐらいお高いんですよ〜。

  



作業に取り掛かる前にデータを入力します。
この画面ではお客様の氏名やプレートナンバーなどを入力します。

   



続いて車輌データの入力です。
メーカーごとに保存されているデータの中から
該当する車種を選択します。

   



国産車だけでなく輸入車のデータもバッチリです。
これはBMWの項目ですが
同じ型式でもグレードごとにかなり多くのデータが入っています。

   



こんなに古いクルマのデータも入っています。
ホンダの
S800なんてクルマは
現車を見たことも無いって人が多いんじゃないかな〜。

   



反対に発売されたばかりの新型車のデータは
メーカーのホームページからダウンロードできます。
このデータをテスターに入力すればOKなんです。
さすがに昨日発表になりましたってクルマは
無理でしょうけどね・・・

   



入力が終ったらクルマ側の準備作業になります。
実際には2人で取り掛かれば入力と同時進行の作業なんですけど。

まずはクルマをリフトアップして4輪のタイヤの下側に
ターニングラジアスゲージ 」をセットします。
このゲージは前後左右に動くターンテーブルのようなもので
調整中にタイヤがスムーズに動くようにするためのものです。

   



続いてホイールにセンサーをセットします。
タイヤとホイールの組み合わせによっては爪のかかるすき間がなく
センサーがセットできない場合もあるんです。
リムガードがホイールのリムにかぶっているタイヤは厳しいですね。
ピレリーの「
ドラゴ」やラリータイヤなんかが代表例です。
でも組み合わせるホイールによってはOKなんですけどね。

    



タイヤを回してセンサーの位置補正をします。
爪のかかっている位置などの微妙なズレをテスターに
読み込ませて補正してやるんです。

   



補正が終ったらセンターリフトを降ろしてクルマを接地させます。
クルマをゆすって足廻りを落ち着かせます。

 



当店ではアライメントの作業中にはピットの入り口にカーテンを引いています。
これは別に外から作業を覗かれないためでは無いんですよ〜。

外からの光がクルマのボディに反射するのを防ぐためなんです。
ミニバンなんかだとボディの面積が広いので
カーテンだけでは防ぎきれないのでカバーも併用します。
 
なぜ外からの光が反射するとマズイのか?
それは・・・

 



4輪にセットしたセンサーからはそれぞれ赤外線の光を出し合っています。
またそれぞれに受光部があり、他のセンサーが出した光を受け取っています。
そしてその受け取った光のデータが本体に送られて数値になるんです。
 
この時にボディから他の光が反射していると
正しいデータが読み取れないことがあるんです。
なにしろ0.1mm、1/60度といった細かい数値を表示するテスターですので
肝心のセンサーの受光部はとってもデリケートなんです。
万全の状態で作業するために工夫をしているんです!

 



続いて「キャスター角」の測定をします。
画面の支持にしたがってハンドルを左右に切ってやります。
どれぐらい切るかが画面にでているんです。
赤い矢印が緑のところまでいけばOKです。

 



ターニングラジアスゲージの上に載っているので
タイヤはスムーズに動くことができます。
ハンドルを切った時だけでなく、
キャンバー調整などで
アームを動かした時にもタイヤは左右に動きます。

 



キャスター測定が終ると現状の測定値が表示されます。
測定値は各項目で左右個別の数値と
トータルトーが出ます。
両端にある黒字の数値は純正の基準値です。

の数値が測定値になります。
赤色の数値は基準値から外れていることを表しています。
調整に取り掛かる前に現在の測定値を記憶させておきます。

 



調整は後から取り掛かります。
後輪の調整は最近の国産車の多くがカム式になっています。
アームの付け根のボルトが
偏芯カムになっており
これを回すことでアームの位置が変わる仕組みです。

調整は簡単でいいのですが、調整範囲が狭いので
極端にローダウンしたクルマや事故車などでは
狂いが大きすぎて戻らない場合もあります。
この場合には市販されている
ターンバックル調整式のアームに交換しないと
ちゃんとした数値に調整することはできません。

アームが発売されていないクルマや調整機能が付いていないクルマは
残念ながら狂っていても調整することはできないんです。
ウラ技としてアームの付け根部分の鉄板を長穴加工をして
調整するという方法もあります。
ただし加工代の工賃がプラスアルファになりますけどね。

 



ナットを緩めて調整してやります。

 



後輪が終ると今度は前輪です。
テスターの画面は個別のデータに表示を変えることができます。
写真は前輪の画面ですが後輪も同じように表示できます。

後輪から調整する」と説明しましたが
前輪の
キャンバーキャスターの左右差が大きかったり、数値が激しく狂っていたり
トーの数値がひどかったりする場合もあります。

  そんな時には後輪に取り掛かる前に前輪の数値を
ざっと合わせておきます。
キャンバーキャスターをいじった場合には後輪に移る前に
もう一度
キャスター測定をしておきます。

 



前輪のキャンバー調整もカム式になってる場合が多いです。
といっても調整機能の付いているクルマは!ですけどね・・・

最近ではミニバンを中心に調整機能がドンドン削られてきています。
前後の
トー調整ができるクルマはまだイイほうで
超高級ミニバンなのに前輪の
トー調整のみなんて場合もよくあります。
これも各メーカーのコストダウンの影響なんでしょうね。
 
このアリストのように
トーキャンバーが 前後とも調整できるなんてクルマは
現在ではかなり希少な部類に入ってしまいます。

 



カムを回してキャンバーを調整します。
このタイプの足回りは
キャンバーを動かすとトーも大きく変化します。
カムを回しながら
トーも同時に調整していかないと正確な数値にならないんです。

 



これが前輪のトー調整の機構です。
ロックナットを緩めておいてタイロッドを回して調整します。
数値が合ったところでロックナットを締めこみます。

昔のクルマは各メーカーでいろんな方式の機構がありましたが
最近の国産車はほとんどがこの方式を採用しています。
実際に昔の方式に比べてトラブルが少ないですね。
日々進化している証拠なんですかね・・・

 



これが昔の方式の1つです。
矢印の部分がパイプになっており内側にネジが切ってあります。
パイプの両端に
スリットが切ってあるのがわかりますか?
ピョコンと飛び出ているロック機構を緩めてやると
スリットの部分が開いてパイプが回るという仕組みです。
 
この方式はネジ部が両端2箇所になるので
サビついて動かなくなってしまうことがよくありました。
しかも工具をかけるところがないので、パイプレンチなどを使って回すんです。
あまりにも固い時にはパイプが曲がるんじゃないかと心配でした。
徐々に消えていったのも必然だったんでしょうね。

 



調整終了後のデータです。
セーブ値」というのが調整前に記憶させた数値です。
この車輌はローダウンをしたための調整でしたので
キャンバーは基準値内に収まっていません。
 
その理由としては調整範囲を超えるぐらい狂っていた場合や
調整できたのにあえて収めていない場合など様々です。
なぜ調整できるのに収めないのか?
そのあたりが
独自のセッティングなんです!

「ローダウンに合わせたセッティング」
「走りのステージや腕前に合わせたセッティング」
「調整機能の少ないクルマでのベストなセッティング」など等・・・

クルマの状態を見極めたうえで
最適の数値に合わせてやること。
メーカーの基準値にとらわれないで調整ができること。
こういったセッティングで差がでるのは過去の経験に基づいた
ノウハウなんです。

当店のテスターよりも精度の高い最新式のテスターを
導入しているお店もあることでしょう。
でもノウハウがなければ宝の持ち腐れです。
アライメントテスターは調整まではしてくれませんからね!

 



最後に調整データをプリントアウトして終了です。
この用紙には調整前後の数値と基準値が印刷されています。

2枚プリントアウトして1枚はオーナーさんへ
もう1枚は当店の保存用にしています。
頻繁にアライメントを調整する方もいらっしゃいますので
「前回と同じデータで!」という場合にも対応できるようにしています。

  あまりにも古いデータはさすがに保管していませんが・・・

測定だけの作業もやっていますので、クルマの走行状態に
不満のある方や、縁石に乗り上げたなんて経験のある方は
ぜひ試してみてください!